小学生や中学生とプログラミングをしていると、最近よく思うことがあります。
「AIを使わせるべきか、使わせないべきか」という話自体が、少し違ってきているんじゃないか。
もちろん、何でもAIにやらせればいいとは思いません。
考える前から答えを聞く。宿題をそのまま投げる。出てきたコードも読まずにコピペする。
これでは、せっかく勉強している意味が薄くなってしまいます。
ただ、その反対に「勉強なんだから全部自分でやりなさい」も、今の時代にはちょっと違和感があります。
実際、子どもたちとプログラミングを進めていると、AIを使える場面はものすごく多いんです。
- エラーの意味がわからない
- やりたいことはあるけれど、次の一歩が出てこない
- コードは動いたけれど、「なぜ動いたのか」がよくわからない
そんなときAIは、答えを代わりに作るだけの道具ではありません。
たとえば、こんな聞き方ができます。
- 「このエラーは何を意味している?」
- 「答えは直さなくていいから、どこを確認すればいい?」
- 「このコードを小学生にもわかるように説明して」
そんな使い方もできます。
AIを使うと勉強にならないのではなく、使い方によっては、立ち止まっていた時間を学ぶ時間に変えられる。
講師として子どもたちを見ていて、そこはかなり大きいと感じています。
東京から大阪まで、走って行く必要はない
この話を考えていると、よく交通手段のことを思い浮かべます。
東京から大阪へ行くとします。
体力をつけることは大切です。マラソンだって悪くありません。
でも、目的が「大阪へ行くこと」なら、普通は東京から大阪まで走りません。
新幹線で行くこともできる。在来線でゆっくり行ってもいい。夜行バスなら寝ている間に移動できます。
時間があれば、自転車という選択だってあるでしょう。
どれが正解という話でもありません。
お金、時間、目的、経験したいことによって、選ぶものが違います。
AIも、それに近い気がしています。
プログラミングを学ぶなら、基礎は必要です。
- 変数とは何か
- 条件分岐はどう動くのか
- 自分が書いたコードが何をしているのか
ここを全部飛ばしてしまえば、AIが変なコードを出してきても判断できません。
つまり、駅まで自分で歩いたり走ったりできるくらいの体力は必要なんです。
でも、だからといって大阪まで全部自力で走る必要はない。
AIに任せたほうがいいところは任せる。
自分で考えたほうがいいところでは、ちゃんと頭を使う。
これから大事になるのは、「AIを使えるかどうか」だけではなく、どこで使うかを選べることなのかもしれません。
AIの情報を追うだけでも、もうけっこう大変です
AIの情報を追っていると、もう一つ感じることがあります。
変化が、とにかく速い。
少し前まで便利だった方法が、数か月後には別のやり方に置き換わっている。新しいサービスや機能も次々に出てきます。
私自身、追いかけるだけでも大変です。
だから最近は、「新しい情報を全部自分で探して読む」というやり方そのものを見直すようになりました。
たとえば、決めた情報源から新しい情報を集める。似た内容を整理する。気になるトピックだけ抜き出す。そして、自分が普段見る場所へ届ける。
そんな仕組み自体をAIと相談しながら作ることもできます。
「今日のAIニュースを教えて」と毎朝聞くだけではなく、情報が自分のところへ集まってくる流れそのものを作ってしまうわけです。
読むことに時間を使い切るのではなく、「これは自分なら何に使えるだろう」と考えるほうへ時間を回せます。
私も似たことをしています。
前回の記事では、YouTubeで気になる解説動画を見つけたとき、全部を何度も見返すのではなく、AIを使って情報を整理する方法を紹介しました。
YouTube学習をAIで効率化|動画を情報収集からアイデアにつなげる方法
気になった動画や資料をAIに読み込ませて、まずギュッと絞って読む。
「これはあとで使えそうだ」と思えば、自分のアイデアの材料としてストックしておく。
全部覚えようとするのではなく、必要になったときに取り出せる形にしておく。
こういう使い方は、これから子どもたちにも必要になってくると思っています。
親が知っておきたいのは「禁止する方法」より「使いどころ」
ここで、親の立場に戻って考えてみます。
プログラミングを習っている生徒さんの保護者と接していると、ChatGPTやAIという言葉自体は、もう珍しくありません。
でも、実際の「使いどころ」まで見えているかというと、思っていたよりそうでもないな、と感じることがあります。
たぶん、ここにちょっとしたズレがあります。
子どもの側には、AIを使える場面がたくさんある。
- わからない言葉をかみ砕いてもらう
- アイデアを広げる
- エラーの原因を探す
- 自分の説明が合っているか確認する
- 作ったものを改善するヒントをもらう
一方で大人から見ると、「AI=答えを出してしまうもの」と見えていることがあります。
だったら、まず大人のほうが、
「AIって、こんな使い方もできるんだ」
と少し知るところからでもいいのではないでしょうか。
もちろん、安全面を考える必要はあります。
年齢に合った利用方法を確認する。個人情報をむやみに入力しない。AIの答えが必ず正しいわけではないと知る。困ったときはAIだけで終わらせず、人にも相談する。
子どもに使わせるなら、こうした基本的なルールは親子で話しておきたいところです。
だから、「自由に使わせればいい」という話でもありません。
ただ、禁止するだけで終わるよりも、どんなときに使うと役立つのかを親子で一緒に考える。
そのほうが、この先も使える力になっていくんじゃないかと思っています。
いまの子どもたちは、かなり面白い時代を生きている
私がパソコンを触り始めたころから考えると、パソコンが家庭に入り、インターネットが広がり、スマートフォンが当たり前になりました。
それでも今のAIの変化には、また少し違うものを感じます。
数か月前に使っていた方法を、もう見直したくなる。
教える側も、追いかけて、試して、「あ、もうこっちのほうがいいな」とやり方を変える。
そんなことが普通に起きています。
だからこそ、今の子どもたちに「このツールのこのボタンを覚えなさい」と教えるだけでは、たぶん足りません。
新しい道具が出てきたときに、
- 何ができるのか
- 自分の目的に使えるのか
- どこまで任せるのか
- どこから自分で考えるのか
- 出てきた答えを信じてよいのか
そこを判断できるようになること。
これから教えていきたいのは、むしろそんな力なのかもしれません。
AIに焦点を当てて見ると、今は人類がまだ経験したことのない、かなり面白い時代の真ん中にいる気がします。
パソコンが一般家庭に広がっていったころも、インターネットが出てきたころもワクワクしました。
でも今は、それとはまた違う種類の変化が起きている。
少なくとも私は、そう感じています。
子どもたちは、その世界をこれから当たり前のものとして生きていきます。
「使わせるか、使わせないか」だけで線を引くのではなく、まずは一緒に使いどころを探してみる。
そこから始めてもいいんじゃないでしょうか。
