AIって、何でもできそうに見えるんですよね。
だから、ちょっと面倒な作業があると、つい「これ全部まとめてやって」と頼みたくなる。
僕も以前はそうでした。
でも、いざ任せてみると思った形にならない。修正を頼む。また少し違う。もう一度説明する。
そのうち、
「これ、自分でやったほうが早いな……」
となることもありました。
最近、消えてしまった約9か月分、170件ほどの記帳データを復旧する機会があったんですが、そのときは少し進め方を変えてみました。
最初から全部をAIに渡さず、作業を小さく分ける。一つできたら確認する。元に戻れる状態を残して、その上に次を積む。
結果、一日仕事を覚悟していた復旧作業は、3時間もかかりませんでした。
今回うまくいったのは、すごいプロンプトを書いたからではありません。大きな作業を、AIが扱いやすい小さな仕事へ分けていったことが大きかったと思っています。
消えたのは、元のデータではなかった
まず、少し状況を説明します。
消えてしまったのは、会計に使っていたExcel側の記帳データです。
1月から9月まで、約170件。ガソリン代や買い物、入金などを記録していたデータでした。
見つけたときは普通に、
「うわ、これ一日仕事だな」
と思いました。
ただ、幸いだったことがあります。
元になるデータまでは失っていませんでした。
領収書やレシートは、普段からスマホで撮影すると、内容がスプレッドシートに一覧として残るようにしています。
銀行やカードの利用明細もCSVで取り出せます。
つまり、「いつ、何に、いくら使ったのか」を一から調べ直す必要はなかったんです。
消えていたのは、その材料を見ながら僕が手作業で入力していた、会計用のExcelブック側。
このExcelはただの一覧表ではなく、科目番号を入れると科目名や集計へ反映される仕組みになっています。
元になる材料はある。
なら、復旧はできる。
最初はそう考えて、一件ずつ入れ直すつもりでした。
でも、銀行のCSVを取り出したところで、ふと思ったんです。
「これ、まず日付だけ揃えられないかな」
最初から「全部やって」と頼まなかった
Googleスプレッドシート上でAIに頼んでみると、日付の形式はきれいに揃いました。
そこで、ちょっと見え方が変わりました。
「あれ、これなら次もいけるかも」
日付が揃うなら、必要な項目も同じ形にできるかもしれない。
それができるなら、これまで使ってきた科目のルールを渡して、勘定科目も付けられるかもしれない。
そんなふうに、一つできるたびに次の作業が見えてきました。
最初から、
「9か月分の会計データを全部復旧して」
とは頼んでいません。
むしろ、
「これができたなら、次はここまで頼めるな」
と、あとから範囲を広げていった感じです。
レシートの一覧、銀行のCSV、カードのCSV。
どれもお金の記録ですが、最初は形が違います。
そこで、日付、金額、摘要、勘定科目など、最終的に必要になる形へ少しずつ揃えていきました。
一方で、僕が自分で確認した部分もあります。
家の買い物なのか、仕事で使ったものなのか。
レシートとカード明細が同じ取引なのか。
金額が少し違っていて、単純に一致するものだけを探せば済まないケースもあります。
「これは仕事で使った」「これは家の買い物だった」という背景は、自分が一番よく知っています。
そこまで無理にAIへ渡す必要はない。
AIに全部やらせることが目的ではありませんから。
ブロックを積んで、三角形の山を作る
今回の作業を振り返ると、僕の頭の中では三角形の山を作っているような感覚でした。
いきなり頂上を作るのではなく、一番下からブロックを積んでいく。
たとえば、
- CSVを取り出せた
- 日付を同じ形式に揃えられた
- 必要な項目を同じ形にできた
- 科目を付けられた
- 確認済みの一覧をまとめられた
一つできたら、そのブロックの形を確かめます。
「この法則なら、次のデータも同じ形にできそうだな」
そう思えたら、その上に次のブロックを置く。
最初から山頂までの設計図が全部見えていたわけではありません。
むしろ、一段積んだから、次の一段が見えたというほうが近いです。

この感覚は、自動化を考えるときにも結構大事なんじゃないかと思っています。
途中の状態を残して、いつでも戻れるようにした
もう一つ、かなり意識したことがあります。
元に戻れる状態を残しておくことです。
CSVを取ってきたら、その元データを直接加工しませんでした。
新しいタブへ読み込む。
日付や項目を揃えた結果は、また別のタブへ出す。
名前を付けて、「ここまでは確認済み」という状態を残してから次へ進む。
AIに頼むと、思っていた以上に一気にデータが変わることがあります。
便利なんですが、そこで元データまで書き換わってしまうと怖い。
だから、
元データ → 加工 → 確認 → 次の加工
という段階を残しておきました。
実際、確認中に、借方が3万円なのに貸方が6万円になっている一件も見つかりました。
でも、その時点ではまだ小さな一覧です。
すぐに確認できました。
170件を全部まとめた最後のデータから探していたら、もっと面倒だったと思います。
一段ずつ確認することと、戻れる場所を残しておくこと。
この二つはセットでした。
山ができてくると、別の道も見えてきた
作業が終盤まで進んだところで、今度は別のことを考え始めました。
「ここまでデータが揃ったなら、この先どうする?」
僕の中では、二つの選択肢が見えてきました。
一つは、このままGoogle Apps Scriptを使って、集計までできる会計用の仕組みを作ってしまうこと。
ここまで形が揃っていれば、作れそうなんですよね。
もう一つは、これまで使っていた会計用のExcelブックへ戻す方法です。
こちらは使い慣れている。
ただし、Excelへ入れるためには、勘定科目を名前だけではなく、決められた番号へ変換しておく必要がありました。
そこで一覧に科目番号の列を追加して、科目と番号の対応表を渡しました。
すると、そこはAIが一気に埋めてくれました。
「あ、ここまで来たら、もう元のExcelに入れられるな」
そこでようやく、山の頂上が見えた感じです。
賢いAIなら、全部うまくやってくれるわけではない
AIのモデルは、新しくなるたびにどんどん賢くなっています。
そうなると、
「もっと高性能なモデルなら、こちらが細かく説明しなくても、意図を汲み取って全部いい感じにやってくれるんじゃないか」
と思いたくなります。
僕もそう考えることがあります。
でも、今回の作業では、それだけじゃないなと感じました。
大事だったのは、AIに渡すブロックの形を揃えておくことです。
日付を揃える。
必要な列を決める。
科目のルールを渡す。
確認済みのデータを次の処理に使う。
三角形の山を作るなら、ちゃんと上に積める形のブロックを一つずつ用意しておく。
そういう感じです。
形が揃ったデータを同じルールで整えるような作業なら、僕が試した範囲では、毎回いちばん高性能なモデルでなくても問題なく進められることが多くありました。
逆に、材料も形式も判断基準もバラバラな状態で、
「あとは全部いい感じにやって」
と頼めば、高性能なAIでもこちらの意図とずれることがあります。
今回、最後のExcelへの入力など、失敗したくない工程では、僕がより信頼している高性能なモデルを使いました。
でも、その前段階の日付を揃えたり、一覧を整形したりするところまで、すべて最高性能のモデルに任せる必要はありませんでした。
モデルを選ぶより前に、AIが扱いやすい形へ仕事を分けておく。
今回の作業では、こちらのほうが効いたと思っています。
復旧作業をしていたら、「ここ自動化できる」が見えてきた
今回、面白かったのは9か月分のデータを元に戻せたことだけではありません。
途中から、
「そもそも、今まで手でやっていたこの部分、かなり自動化できるんじゃないか」
と思い始めました。
普段、領収書やレシートはスマホで撮影すれば一覧が残る。
銀行やカードの明細もCSVで取り出せる。
毎回同じ形式に揃える作業があるなら、そこは仕組みにできそうです。
家用か事業用かなど、自分で確認したい部分は残ります。
でも、その手前まで一覧を作る。
形式を揃える。
同じルールで変換する。
そういうところは、かなり自動化できそうだと分かってきました。
そして、小さな処理を一つずつ作っていると、ときどき、
「あれ? これとこれをつなげたら、ここまで一気にいけるんじゃないか」
と気づく瞬間があります。
これが面白いんですよね。
自動化のアイデアって、机に座って「さて、何を自動化しよう」と考えているだけでは、なかなか出てこない気がします。
実際に面倒な作業をやってみる。
その一部分をAIに任せてみる。
うまくいった結果を見ながら、
「これ、毎回同じことやってるな」
「この二つ、つなげられるな」
と気づく。
僕の場合、自動化の形はそんなふうに後から見えてくることのほうが多いです。
変わったのは、AIより僕の仕事の分け方だったのかもしれない
振り返ると、今回速く終わった理由はAIの性能だけではなかったと思います。
「9か月分の帳簿を復旧する」
と考えたら、大仕事です。
でも、
- 日付を揃える
- 必要な項目を同じ形にする
- 科目を付ける
- 重複を確認する
- 科目番号へ変換する
- 会計用Excelへ入れる
と分ければ、一つひとつはそこまで大きな仕事ではありません。
そして、一つ終わるたびに確認する。
おかしくなったら一つ前へ戻れる。
うまくいけば、その結果を次の作業の土台にする。
以前の僕は、大きな仕事をAIにまとめて渡して、思った結果にならなければ修正を繰り返すことがありました。
今回は逆です。
小さく頼んで、うまくいったものだけを積み上げていった。
AIへの頼み方を変えたつもりでしたが、もしかすると一番変わったのは、僕自身の仕事の分け方だったのかもしれません。
もしAIに任せたい作業があるのに、うまくいかないなら、最初は全部じゃなくてもいいと思います。
「この一覧の日付だけ、同じ形式に揃えられる?」
そのくらいから始めてみる。
できたら、結果を確認して残す。
そこから次のブロックを一つ積んでみる。
僕の場合、その小さなお願いが、9か月分の帳簿を復旧する入口になりました。
そして気づけば、復旧だけではなく、これから自動化できそうな仕事まで見えるようになっていました。
